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優しいヒトに虐められてます。
第16章 彼の秘密
「まあ、ちょっと前までそんなつもりはなかったんだけどね」
彼の言葉に、ハルは洟をすすりながら尋ねた。
「さっきも言ってたね。どういうこと?」

「ハルはロマンチストだから、後でエッチなことに飽きて
まともな恋愛じゃなくて
性的な快楽から僕との関係が始まったって思ったら
後悔するんじゃないかなって、ずっと考えてたんだ。
そうなったら、僕に興味を失って、僕と付き合っていた時間を
無駄にしたって思うかもしれない、って。
もっとまともな恋愛に時間を注げばよかった、って」

ハルは、そんなことを考えたこともなかった。
結局、彼はハル以上にハルのことを考えてくれている。
そんな人のことを嫌いになるだなんて
ましてや飽きるだなんて、そんなこと、絶対にない。

「でも、ハルが美術館に行った後、男の家で襲われたあの日
気持ちが初めて揺らいだよ。
今後も同じようなことが起こるかもしれない。
ハルが酷い目に遭うかもしれないのに、自分は
恋人じゃないんだからって、見て見ぬフリができるのか?
何度も自問したよ。

答えは、もちろんノーだ。
だから、それくらいならいっそほんとに付き合って
ハルを守ろうって。
少なくとも、ハルが望む間だけでもハルのことを守ろうって
そう思ったんだ」

ハルは大津川の胸に顔をうずめた。
発した声は濡れていて、裏返っていて、くぐもっていた。
「……嫌いになんか、ならないから。
……だから、ずっと私を守って」
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