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仕事終わりは癒しの時間
第7章 甘える練習

私が物心付いた時には、母親は病院で入院していた。
元々身体が弱く、私を産んでから体調を崩しやすくなって、病気がちになったらしい。
父親はいつも仕事の帰りが遅く、帰宅時間には私は夢の中に居た。
そして、私が5歳の頃に母親が亡くなった。
葬儀等を終えると、私は父方の祖父母に預けられた。
祖父母は元々両親の結婚に反対していたらしく、娘である私にいつも厳しい態度で来られ、家に居たくなくていつも図書館で時間をつぶしていた。
小学校に上がる前に父親が転勤することになり、静岡から神奈川に移り住んだ。
転勤してからも、父親の帰りは遅かったので、父親が少しでも休めるよう慣れない家事を必死にこなした。
抱き締めてもらいたい、何処かに遊びに行きたい、家族とお出かけする友達が羨ましくても言わなかった。
近所の人もよく気遣ってくれて、隣に住んでいた拓也がよく家に来て遊んでくれた。
10歳になる頃、ようやく父親の仕事も落ち着いてきて、帰宅時間も早くなってきた。
もう少し経ってから、抱き締めてもらおう、ちょっとワガママを言おうと思っていた。
でもそれは、父親が1人の女性を連れて来たことで叶わなくなった。
「茜、黙っててごめんな。パパ、この人と再婚しようと思うんだ」

