この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
霞草
第4章 出逢い
おじさんは、
「いや、初めてじゃないんだよ。2.3年に一度くらいの間隔で、君みたいに、ふらっと長く滞在する人はいるんだ。」
と言った。
久しぶりに歩いたせいかおかわりを頼んだ。
おばさんは、
「そうこなくっちゃ若者は。」
と屈託のない笑顔で茶碗を受け取る。
こんな風に毎日家族で楽しく食事する。当たり前なのかもしれないが、、
食器の音しかしない食卓で、腫れ物に触るかのごとく成績の話をする母。
仕事が忙しくて、普段はいない父と兄。
家族全員が揃って食事することは少なく、貴重な時間なはずが、
父が、兄貴の仕事ぶりの確認をしてから、
「お前も後をついてきてるよな。」
と威圧する。
母が、
「大丈夫よね。」
と言う。
僕は、
「ああ…」
と返事して早くその場を逃げ去る。
僕にとっては、食べた気もしないのが、家族揃って食事することだった。
目先の大学、就職という問題。
自分探しという名の旅の終わりは見えそうもなかったが。
こんな温かい家庭を持ちたい。
共に温かい家庭を作る大事な女性と過ごしたい。
漠然とした希望が生まれた。