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霞草
第6章 二人の想い
霞にデートと称して誘った訳ではないが、
騒々しいと嫌う街に付いて来てくれるのは、
僕に好意を持ってくれているのではないか。
今日、出掛けることで、
もっと僕のことを意識してくれないだろうか。
霞のことを考えて、
自分ではデートと思っていたから眠れなかったのだ。
食堂で絡んできた男に彼女は、
『案内できない』と、はっきりと断っていた。
なのに、僕と二人で、1日過ごすのを受け入れてくれたのだ。
心の内に秘めた想いにふけっていると、順番がきたらしく、
「あなたも食べる?嫌いじゃないよね?」
と訊かれた。
「うん。」
僕は慌てて返事した。
ベンチに並んで座って食べる。
彼女はおいしそうに食べる。
考えてみたら、まだ4月になったばかり、夏でも避暑地として来る客がいるのだ。
ソフトクリームに行列が出来るはずがないのでは…。
「どう、美味しい?念願のソフトクリーム。」
「うん。美味しい。良かった思い出して。」
「街のより美味しい?」
「実は、それも食べた事ないの。」