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第3章 　〝本の虫〟と呼ばれる少女

　彼女の視線は青年がひしと握りしめている一冊の本に釘付けになっていた。


「―春香伝」

　何と彼は女子どもの間で今、大流行しているという恋愛小説本を大切に抱えているのだ。普通、貴族の若い男が好んで読むものではない―というより、表向きに読むのは体裁が悪いとされているような通俗小説とされている。



　ファソンの視線にギクリとしたように青年は眼を見開き、慌てて言った。



「こ、これはだな」