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第16章 嫁と姑

―私がいれば他には何も要らない。


　強く抱きしめて囁いて欲しいの。


　ファソンの眼からはとめどなく大粒の涙が溢れ出し、白い頬をつたい落ちた。


　今更ながらに、ふた月以上も前のことを思い出さずにはいられない。



　あの夜がカンと過ごした最後の夜となった。彼の腕に抱きしめられて味わったのは官能の極みや愉悦だけではない。大好きな男にこんなにも求められて嬉しいと感じる純粋な女としての悦びでもあった。