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銀木犀の香る寝屋であなたと
第1章 月夜の出会い
「葉子だよ。うちで食事の支度をしてくれているだろうから知っていると思うが」
「え、ええ」
下働きの使用人である葉子の存在を知ってはいたが、このようにまともに見ることは初めてで、いつも手拭いで髪と顔を覆うようにし、薄汚れた割烹着で慌ただしく野菜を洗っているところを何度か見たことがあるだけだった。(とてもお綺麗なひとだったのねえ)
珠子は思わず葉子の顔を見入ってしまう。そこへまた後ろからばあやが「不躾ですよ」と注意するので、そっと目を伏せた。
「で、こちらは息子の一樹くん。彼は製材のほうで奉公してくれていたんだが春から中学へ通ってもらうことにしたよ」
「は、はあ」
いまだ事情がよく呑み込めてない珠子に、浩一はコホンと咳払いをして続けた。
「年が明けたら葉子に後添えとして入ってもらおうと思ってるんだ。珠子。新しいお母さまは嫌だろうか」
いきなりの話で珠子には嫌かと聞かれても、よくわからず「いいえ」としか答えられなかった。
「よかった」
浩一は安心したように葉子に目配せをすると、少し葉子は前に出て三つ指をつき頭を下げた。
「珠子おじょうさま。これから息子と一緒にだんな様にお世話になることになりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「え、あ、はい。こちらこそ、よろしくおねがいいたします」
慌てて珠子も頭を下げる。
「一樹です。よろしくお願いいたします」
「あ、はい。こちらこそ」
頭を下げたままチラッと一樹を見ると彼は複雑そうな顔をしていたが、珠子がこっそり笑いかけると少しだけ相好を崩した。
「さあ、そんなにかしこまらないで。珠子、葉子はお母さま、一樹くんはお前の兄さまだよ」
「まあっ」
やっと合点がいった珠子は浩一と葉子の再婚よりも、一樹と兄妹になれることが嬉しくてたまらなかった。
「お母さま、兄さま、仲良くなさってね」
「え、ええ」
下働きの使用人である葉子の存在を知ってはいたが、このようにまともに見ることは初めてで、いつも手拭いで髪と顔を覆うようにし、薄汚れた割烹着で慌ただしく野菜を洗っているところを何度か見たことがあるだけだった。(とてもお綺麗なひとだったのねえ)
珠子は思わず葉子の顔を見入ってしまう。そこへまた後ろからばあやが「不躾ですよ」と注意するので、そっと目を伏せた。
「で、こちらは息子の一樹くん。彼は製材のほうで奉公してくれていたんだが春から中学へ通ってもらうことにしたよ」
「は、はあ」
いまだ事情がよく呑み込めてない珠子に、浩一はコホンと咳払いをして続けた。
「年が明けたら葉子に後添えとして入ってもらおうと思ってるんだ。珠子。新しいお母さまは嫌だろうか」
いきなりの話で珠子には嫌かと聞かれても、よくわからず「いいえ」としか答えられなかった。
「よかった」
浩一は安心したように葉子に目配せをすると、少し葉子は前に出て三つ指をつき頭を下げた。
「珠子おじょうさま。これから息子と一緒にだんな様にお世話になることになりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「え、あ、はい。こちらこそ、よろしくおねがいいたします」
慌てて珠子も頭を下げる。
「一樹です。よろしくお願いいたします」
「あ、はい。こちらこそ」
頭を下げたままチラッと一樹を見ると彼は複雑そうな顔をしていたが、珠子がこっそり笑いかけると少しだけ相好を崩した。
「さあ、そんなにかしこまらないで。珠子、葉子はお母さま、一樹くんはお前の兄さまだよ」
「まあっ」
やっと合点がいった珠子は浩一と葉子の再婚よりも、一樹と兄妹になれることが嬉しくてたまらなかった。
「お母さま、兄さま、仲良くなさってね」