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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
珠子は収穫したイモを『友の家』に持っていこうと思い出来るだけ大きなものを選別した。
あれからちょうど一週間経った。
一樹も帰っているかもしれない。
期待を込めて一目遠くからで良いから見たいと思っていた。麻袋に入れ肩に担ぐ。少々重たいが足取りは軽かった。
小一時間ほど歩き『友の家』につく。遠くから眺めていると、あの柿を取っていた少年が庭先で皆の面倒を見ていた。
葉子の姿は見えない。周囲を見渡しながら、珠子は玄関らしい場所に行き、「ごめんください」と声を掛ける。
「はーい」
少年が庭から迂回して顔を出す。
「あ、この前のお姉さん」
「こんにちは。今日、これを皆さんに持ってきたの」
麻袋のイモを差し出すと少年は目を輝かせ、「うわー!みんなおいでよっ!」と大声をあげる。
「なになにー」
「どうしたのお?」
子供たちがワイワイやってくる。五歳くらいから十歳くらいまでの子供たちがイモを眺め、目を輝かせている。
「ありがとう!」
少年は礼儀正しく頭を下げた。
「少しだけど仲良く食べてね。あの……。今シスターはいらっしゃらないのかしら」
「シスターはね。戦争から帰ってきた兄ちゃんと姉ちゃんと教会へ行ったよ。夕方には帰るみたい」
「そうなのね」
「あ、そうだ。おイモありがとう。シスターに言っておくので名前教えて」
「えっ。あ、はい。キヨと言います」
「キヨさん、ありがとう」
「ありがとう」
子供たちは皆きちんと礼をのべる。葉子のしつけが行き届いているのだろうと、感心して珠子もきちんと頭を下げた。
「それじゃ、また。ごきげんよう」
「さよならぁ」
珠子は手を振り立ち去る。一樹が帰ってきていることに高揚感を覚えたが、同時に『姉ちゃん』という存在が気にかかる。(誰なのかしら)
とりあえず、教会へ向かうことにした。
あれからちょうど一週間経った。
一樹も帰っているかもしれない。
期待を込めて一目遠くからで良いから見たいと思っていた。麻袋に入れ肩に担ぐ。少々重たいが足取りは軽かった。
小一時間ほど歩き『友の家』につく。遠くから眺めていると、あの柿を取っていた少年が庭先で皆の面倒を見ていた。
葉子の姿は見えない。周囲を見渡しながら、珠子は玄関らしい場所に行き、「ごめんください」と声を掛ける。
「はーい」
少年が庭から迂回して顔を出す。
「あ、この前のお姉さん」
「こんにちは。今日、これを皆さんに持ってきたの」
麻袋のイモを差し出すと少年は目を輝かせ、「うわー!みんなおいでよっ!」と大声をあげる。
「なになにー」
「どうしたのお?」
子供たちがワイワイやってくる。五歳くらいから十歳くらいまでの子供たちがイモを眺め、目を輝かせている。
「ありがとう!」
少年は礼儀正しく頭を下げた。
「少しだけど仲良く食べてね。あの……。今シスターはいらっしゃらないのかしら」
「シスターはね。戦争から帰ってきた兄ちゃんと姉ちゃんと教会へ行ったよ。夕方には帰るみたい」
「そうなのね」
「あ、そうだ。おイモありがとう。シスターに言っておくので名前教えて」
「えっ。あ、はい。キヨと言います」
「キヨさん、ありがとう」
「ありがとう」
子供たちは皆きちんと礼をのべる。葉子のしつけが行き届いているのだろうと、感心して珠子もきちんと頭を下げた。
「それじゃ、また。ごきげんよう」
「さよならぁ」
珠子は手を振り立ち去る。一樹が帰ってきていることに高揚感を覚えたが、同時に『姉ちゃん』という存在が気にかかる。(誰なのかしら)
とりあえず、教会へ向かうことにした。