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銀木犀の香る寝屋であなたと
第7章 別離
 ロバートが三日間ほど別の基地に向かうというので、珠子は彼の言う通り、カフェーを休み少し家でゆっくりした。キヨが白湯を持ってくる。

「こんなものしかなくて……」
「いいのよいいのよ。白湯は優しい味がするわ」

「珠子さん。わたしたちにばかりに……」
「気にしないの。私はほらお店で色々頂き物するから、ね」

 キヨにもその『頂き物』が珠子にとって本当に欲しいものではないことぐらいわかっていた。
赤い口紅も酒も派手なスカーフも珠子の好きなものではない。
 それでも最近の珠子は、少し以前と違う何か穏やかな雰囲気が醸し出されている。

「何かいいことでもありました?この頃少し嬉しそうに見えますね」
「えっ?そ、そうかしら」

「夜中にもうなされることが減りましたし……」
「わ、私、何か変なこと言ってるかしら?」

 珠子は眉をひそめ心配そうに尋ねる。

「いえ……。たまに『かず、かず』とおっしゃるので何か夢の中で数えてらっしゃるんですかね」
「あ、そう、なのね。覚えていないからわからないわ」

 頬を染める珠子にキヨはある予感が沸いた。

「もしかしてお好きな人がいらっしゃるのでは?」
「えっ……」

「そうなんですね」
「……。まだ……わからないの。とても親切にしてくれているし好きだとも言ってくれるけど……」
 
 珠子は複雑な表情をしながらも喜びが垣間見える。
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