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色絵
第2章 入門
30分いや小一時間くらいだろうか、枝葉の部分が色付けされていくのを見ているのは飽きなかった。
家主が筆を洗い片付ける。
「退屈だったでしょう。」
「いえ、先生が描いているのを見ているだけで楽しいです。」
「先生か…」
家主は微笑んだ。
儚い笑顔も美しくて、また鼓動が早くなる。
「先生とお呼びしてはいけなかったでしょうか。」
「いや構わないですよ。」
先生が立ち上がり珈琲を入れてくれた。
「お茶も出さずにすみません。絵に構うと、周りが全く見えなくなってしまって…」
「いいえ、こちらこそ突然お邪魔して、お仕事の最中に申し訳ありません。」
「いや、一人で仕事をしていても退屈でね。
こんなこと言っては失礼だが、生徒をとって、一緒に描けたら楽しいかなと、
かといって、教えるのを生業にするつもりもないので、あのような絵を表に出しているわけですよ。
もちろん目立たないわけで、こうやって訪ねてきてくださったのは、貴女が初めてですよ。」