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色絵
第2章 入門
「うん、面積の広いところから描くというのも一つの手法だね。
薔薇を近くで見てきてごらん。花の香りを嗅いでごらん。」
先生に言われるままに花に近づいた。
淡い上品なピンクの薔薇、庭に同じものが咲いていたのを先ほど見た。
先生は、どう見ろとかヒントはくれない。ワタシはただその美しさを愛で、鼻を近づけて香りを楽しんだ。
席に戻る。
先生は色付けを続けている。
「今、僕が色付けした花を思い出してごらん。
花びらの色は、どこが一番濃かったかな?」
ワタシは目を閉じて思い出す。
「芯の方だったと思います。」
「では、香りはどこからしたかな?」
「やはり、芯の方からです。」
「そう、芯の中に、雄しべや雌しべ、命の源があって、そこから香りも色も作られているんだよ。
でもその花に命を送っているのは、茎や葉だね。
描き方に正解などないんだけど、僕は、花の成り立ち、命の源から描くようにしているんだよ。」
「だから、生き生きとしていているんですか?」