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色絵
第9章 猫
彼女は何も話してくれなかった。いきなり彼女の両親から招待状が来て結婚を知ったんだ。
無論、式には出席しなかったし、彼女の気持ちを聞くこともできないままだった。」
先生がまた珈琲を啜る。
話したくない過去を何故話すのだろうか、ワタシは聞く権利がある者と期待していいのだろうか…
「それからは、今まで以上に絵に没頭した。
僕の絵の為に人生を女の一生を掛けてくれた彼女の為にね。秋に大きな賞をとる、それだけを目標に頑張ったんだ。
賞をもらって、新聞にもなった。それを期にとんでもない副賞が来たんだ。
突然彼女が僕の元に来た。離縁されてね。しかも彼女は妊娠していた、もちろん旦那の子供をね。
精神的に弱っていて病院から抜け出して僕のところに来たんだ。
嫁ぎ先が合わなくて僕の存在も薄々気がついていてね。子供も果たして誰の子かわからないと詰られ、大事な時なのに参ってしまったんだよ。
実家で入院させてくれたけど見舞いもなく、子供を処置して次の嫁ぎ先を考えようと…
子供に罪はないと飛び出して来たんだ。」