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第9章 猫

「でも二人で居れば幸せだった。金はないし貧しい思いをさせたけどね。親に捜されないよう、子供が生まれたら籍を入れようと決めて頑張った。」

先生が一息入れる。
子供があの子だとして、彼女はどうしたんだろう。

「いよいよ出産の時がきて、僕だけが立ち会った。
そしてあの娘が産まれたんだ。
彼女の命と引き換えにね。体力が出産に耐えられなかったんだ。

出産と同時に呼ばれてね。彼女の最期の言葉は、
『ありがとう、この娘をよろしく。』
だった。
僕は何もしてあげられないまま彼女を失ってしまったんだ。

そしてね、皮肉なことに彼女の死亡届けとあの娘の出生届けを出しに行った。さらに、僕は彼女と婚姻届けを出すことは出来ないし、あの娘を養子にすることも出来ない。
こうして実家に連絡する。

堕胎すように言ったはずの親は、今度はあの娘を家の為に育てると言い出した。あの娘が五歳になった時、母親がなくなって、父親は僕に養子縁組みの話をしてきた。

なつかないし、自分の方が先に死ぬなどと、また身勝手な理由でね。

あの娘を引き取る為にここに越してきたんだ。」


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