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色絵
第9章 猫

「先生、彼女は学校には行ってないのですか。」

「病弱だからね。家から出たことすらないよ。沙絵は…
沙絵の為に黒塀を建てたんだ。彼女には、この外には何もないと教えてある。
黒塀より向こうは真っ暗な世界だとね。

そう、沙絵という名も僕が付けた。沙織、あっ彼女の名前からとって、僕と彼女を結ぶ絵という字を付けたんだ。

生まれたら名前を二人で決めようと話していたから、届けの時に、僕が決めたんだ。沙織の忘れ形見、本当によく似ているんだよ。」

「先生、もしかして赤い着物の絵は、沙織さんか沙絵さんなんですか。」


「もう隠しても仕方ないですね。沙絵にポーズをとらせて、沙織を想いながら、沙絵が大人になったらと想像して描いたものです。」

ワタシは、沙織さんには勝てない。亡くなった方と競うことも出来ない。先生は沙織さんを想いながら沙絵さんを育てていくんだ。これからもずっと…

そして先生を想いながらも、先生と沙絵さんを遺して逝かなければならなかった沙織さんを思うと辛い。

先生のどこか儚い印象の理由がわかったような気がした。

ワタシは今まで通りにしていていいのだろうか…


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