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色絵
第9章 猫
そして、心の底にある想いもはっきりしているのだ。
先生は独身であることには変わりない。
血の繋がらない娘を育てているだけ。
嘘はついていないし、ワタシへの愛も本物だと、はっきりおっしゃった。
ワタシが先生を好きでいてはいけない理由ができた訳じゃない。
絵を眺める。
レッスンの間、純粋に取り組んだ成果。
別に恋の相手を探そうとあの門をくぐったわけではない。
絵を通して先生を知るうちに惹かれてしまったのだ。一線を越えたのも、そう…
思い返してもどこかで間違えたという場面が浮かばなかった。
考えても決められない。
ワタシは絵を片付けて寝室にいった。
意外にその後はすぐに寝つき、主人が帰ったのも知らず朝を迎える。
ピピピ…
体温計が今日から安全なことを知らせる。
その時にはワタシの心は決まっていた。
主人も愚痴を言うこともなく出かけていく。
ワタシはいつものように支度をして、屋敷に向かった。
カラン、カラン…
この鐘もいつもと変わらない。
アトリエからの先生の挨拶も…
「おはようございます。」
着物になってアトリエに入るワタシを先生は笑顔で迎えてくださった。