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色絵
第10章 狂い咲き
目覚めると先生はそばに居なかった。

最近、きちんと寝ているのに昼間も眠い。
先生も休んだほうがよいと、しばらく一人にされることがある。

でも、大抵、ワタシが目覚めて少しすると、どうして分かるのか、寝室に戻って来られる。

でも、今日は違った。
20分しても戻って来ない。ワタシはアトリエにいらっしゃるかと見に行ったが、居なかった。

とりあえず、トイレに行きたくて用をたす。
ワタシが自由に行き来するのはそこまで…
キッチンやその奥の生活空間に足を踏み入れることはなかった。

トイレより少し先の部屋の扉が、いつも閉ざされた扉が、今日は少し開いていた。

話し声がする。
先生と沙絵さんだろう。
邪魔しないように寝室に戻ろうとした。

「………ぇ、ねぇ、」

「っ…沙……沙絵」

「間違えてもいいのよ。
いつものように沙織と呼んで…」

「っく…沙絵…やめっ…」

「っ…ふふっ…やめられないでしょ……う君」

「っ…お父様と…呼び…なさぃ…っあ…」

部屋から漏れる囁くような会話。
一瞬で何か良からぬ事が行われていると悟る。

ワタシは震える足が絡まないよう、音を立てないようにして、寝室に急いで戻った。
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