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色絵
第3章 デッサン
そのあと、色を無視して影だけで立体的に描くというものと、両方を組み合わせて描くという練習をした。
描いている間は、りんごの観察に集中していて、一切邪念が生まれることはなかった。
先生からスケッチブックと、先生が描かれた色紙3枚を手渡される。
「ご自宅に戻られて絵を見ながら模型とりんごを思いだし、思いだしたら絵を見るというのが宿題です。明日は筆を持ってみましょうね。」
そういって今日の教室は終わりになった。
「ありがとうございました。先生、もう一度後ろの絵を見てもいいですか?」
「もちろん、どうぞ。」
立ち上がり振り向く。
絵の女性は実在しないような返事だったが、
明らかに先生を愛していて、先生の愛している人とわかる。
ワタシはそれに嫉妬したんだと改めて理解した。
そしてその思考の間、ワタシの中に夫という存在は消し去られていた。
「先生は、風景画も描かれるんですか?」
「一応、描けますよ。此処からの庭とか、ただ風景を描きに旅に出ることはないですね。写真から描くこともないので、実際はあまり描かないというほうが合ってるのかな…」
「今日は色々ありがとうございました。」