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色絵
第4章 色付け
寝ている奥さんの手前に衣紋掛けを置く。奥さんの寝顔が見えるようにした。
衣紋掛けと着物が即席の間仕切りになる。
奥さんの充たされた寝顔をつまみにし、着物の柄を描き始めた。
「立てば芍薬か…
よく言ったものだ。」
思わず笑みが出る。
着物の裾にあしらわれた芍薬。スッとした立ち姿が美しい花として評されている。
着物の芍薬達が裾から立ち上がり美しい。でも絵の中の一番美しい芍薬は奥さんだった。
凛とした立ち姿…
清楚な佇まいの女性が背を向けて上掛けを脱いでいる。
白い着物の襟足は少し後ろに繰られている。
色街の花魁が街中を練り歩く時くらいの僅かな露出。
その僅かに見える肌から女性の強烈な色気が溢れ大輪の華が咲いている。
正に芍薬の佇まいなのだ。
裾の芍薬達を一つ一つ筆入れしていく。
女性の色付けは背中の途中で終わっているのだが、足元の芍薬達を色付けする事で、中心の女性こそが芍薬であることがはっきりしてきた。
等身大に近い紙なので、ここにも奥さんがいるようで興奮する。
また、着物を見ると、奥さんの意識が戻ってきていることがわかった。
「気づきましたね…」
「先生…ワタシ…」