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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
夜勤を終えた月城は朝靄の中、麻布十番の自宅へ帰宅の途に着く。
以前は北白川の屋敷がほぼ自宅のようなもので、麻布十番の家は休みの日に風を通しにゆくくらい、執着の薄いものであった。
仕事の虫の月城は自宅に帰っても特にやることもないので、暇を持て余していたくらいである。
屋敷の階下の使用人居住スペースの中でも、月城は執事なので、広い執務室と自室を与えられていた。
だから、わざわざ自宅に帰らなくてもゆっくり休むことが出来るので、屋敷の階下で過ごす時間の方がずっと長かったのだ。
だが…。
暁と愛し合うようになり、暁が月城の隣の家を買い、住み始めたことから、月城の生活は180度変わった。
土曜の夜勤が明けると、仮眠も取らずにすぐに自宅に帰る。
…一刻も早く、暁に会いたいからだ。
自宅に帰る前に、隣の暁の家に帰るのが月城の習慣になった。
月城に合鍵を渡した時の暁の恥じらうような美しい微笑みは今でも忘れられない。
「いつでも来ていいから…。僕の家は君の家だと思って…」
恥ずかしそうにそう言った暁が余りに愛おしくて、月城は思わず強く抱きしめた。
「…暁様…」
…暁への愛おしさは日に日に増すばかりだ。
こんなに人を愛おしく思うことがあるなんて…少し前までは思ってもみないことだった。
鍵を開けて、暁の家へ入る。
通いの家政婦の糸には日曜日は休みを取らせている。
「日曜日は君と二人きりで過ごしたい…。平日はほとんど会えないから…」
暁がそう言葉少なに語り、月城を見上げた。
北白川家の執事である月城は月曜日から土曜日までは泊まり込みの勤務で、日曜日だけが休みである。
その日曜日もお茶会や夜会、主人である北白川伯爵が帰国し、外出の用が入れば準備したり、同行したりと出勤することになるので、暁とゆっくり過ごせる日は大変に貴重であった。
和洋折衷の洒落たネオクラシック様式の階段を上がり、暁の寝室に向かう。
軽くノックするが、返答はない。
時刻はまだ6時だ。
朝が弱い暁はまだ夢の中であろう。
そっと扉を開けて中に入る。
…暁は広い寝台の中で、静かに眠っていた。
白い羽枕に埋もれるように眠る暁は、息を呑むほどに美しい。
薄い白い夜着がやや寝乱れて、白い脹脛が覗いている。
薄紅色の唇はやや開いて規則正しい呼吸を繰り返している。
月城は思わず貌を近づけ、唇を重ねる。
以前は北白川の屋敷がほぼ自宅のようなもので、麻布十番の家は休みの日に風を通しにゆくくらい、執着の薄いものであった。
仕事の虫の月城は自宅に帰っても特にやることもないので、暇を持て余していたくらいである。
屋敷の階下の使用人居住スペースの中でも、月城は執事なので、広い執務室と自室を与えられていた。
だから、わざわざ自宅に帰らなくてもゆっくり休むことが出来るので、屋敷の階下で過ごす時間の方がずっと長かったのだ。
だが…。
暁と愛し合うようになり、暁が月城の隣の家を買い、住み始めたことから、月城の生活は180度変わった。
土曜の夜勤が明けると、仮眠も取らずにすぐに自宅に帰る。
…一刻も早く、暁に会いたいからだ。
自宅に帰る前に、隣の暁の家に帰るのが月城の習慣になった。
月城に合鍵を渡した時の暁の恥じらうような美しい微笑みは今でも忘れられない。
「いつでも来ていいから…。僕の家は君の家だと思って…」
恥ずかしそうにそう言った暁が余りに愛おしくて、月城は思わず強く抱きしめた。
「…暁様…」
…暁への愛おしさは日に日に増すばかりだ。
こんなに人を愛おしく思うことがあるなんて…少し前までは思ってもみないことだった。
鍵を開けて、暁の家へ入る。
通いの家政婦の糸には日曜日は休みを取らせている。
「日曜日は君と二人きりで過ごしたい…。平日はほとんど会えないから…」
暁がそう言葉少なに語り、月城を見上げた。
北白川家の執事である月城は月曜日から土曜日までは泊まり込みの勤務で、日曜日だけが休みである。
その日曜日もお茶会や夜会、主人である北白川伯爵が帰国し、外出の用が入れば準備したり、同行したりと出勤することになるので、暁とゆっくり過ごせる日は大変に貴重であった。
和洋折衷の洒落たネオクラシック様式の階段を上がり、暁の寝室に向かう。
軽くノックするが、返答はない。
時刻はまだ6時だ。
朝が弱い暁はまだ夢の中であろう。
そっと扉を開けて中に入る。
…暁は広い寝台の中で、静かに眠っていた。
白い羽枕に埋もれるように眠る暁は、息を呑むほどに美しい。
薄い白い夜着がやや寝乱れて、白い脹脛が覗いている。
薄紅色の唇はやや開いて規則正しい呼吸を繰り返している。
月城は思わず貌を近づけ、唇を重ねる。