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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
「暁!…早くこちらに来なさい。お前を紹介していただきたいと仰るお方が待っておられるのだ」
礼也のやや急かすような声が届く。
暁ははっと振り返る。
「はい、兄さん。…今、まいります」
月城を名残惜しげに見上げる。
「…もう行かなくちゃ…」
「…はい。縣様をお待たせしてはなりません」
「…うん…」
しかし暁の潤んだ黒い眼差しは月城を捉えたまま離さない。
…せっかく会えたのに、僅かな時間でしか言葉を交わせないもどかしさがその瞳から伝わってくる。
月城も同じ思いだ。
…しかし、言葉にする訳にはいかない。
断腸の思いで口を開く。
「…さあ、暁様…」
促すように優しく背中を押す。
暁が振り返りながら、月城を見上げる。
「…週末まで、もう逢えないの…?」
いじらしくも可愛らしい言葉に胸が痛む。
「…はい。申し訳ありません」
暁は寂しげに目を伏せた。
「…そう。…じゃ…」
暁は兄が待つ玄関ホールに向かう。
その背中を思わず抱き締めたくなる気持ちを抑え、その場で愛しい恋人を見送る。
そして玄関のドアを閉め、下僕達に指示を出す為に階下への廊下を足早に歩き始めたのだった。
礼也のやや急かすような声が届く。
暁ははっと振り返る。
「はい、兄さん。…今、まいります」
月城を名残惜しげに見上げる。
「…もう行かなくちゃ…」
「…はい。縣様をお待たせしてはなりません」
「…うん…」
しかし暁の潤んだ黒い眼差しは月城を捉えたまま離さない。
…せっかく会えたのに、僅かな時間でしか言葉を交わせないもどかしさがその瞳から伝わってくる。
月城も同じ思いだ。
…しかし、言葉にする訳にはいかない。
断腸の思いで口を開く。
「…さあ、暁様…」
促すように優しく背中を押す。
暁が振り返りながら、月城を見上げる。
「…週末まで、もう逢えないの…?」
いじらしくも可愛らしい言葉に胸が痛む。
「…はい。申し訳ありません」
暁は寂しげに目を伏せた。
「…そう。…じゃ…」
暁は兄が待つ玄関ホールに向かう。
その背中を思わず抱き締めたくなる気持ちを抑え、その場で愛しい恋人を見送る。
そして玄関のドアを閉め、下僕達に指示を出す為に階下への廊下を足早に歩き始めたのだった。