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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第1章 夏の華
「…元気がないね…?…何か悩み事?」
背後から肩に手を置かれる。
聞き覚えのある声に、はっと振り向く。

「大紋様…!」
…暁のかつての恋人であり、礼也の親友の大紋春馬が穏やかな表情で佇んでいた。
大紋は夏用の濃灰色の上質なスーツの上下、象牙色のシャツ、濃紺のネクタイを締め、まるでここが英国貴族の屋敷かのように、優雅に堂々と佇んでいた。
きちんと撫でつけられた髪はやや長めで、僅かばかり神経質な印象を与える端正な目鼻立ちに艶めいた色を添えていた。

「…九条子爵の子息が星南の同期でね。招待されたのさ」
…大紋春馬は爵位はないが、富裕な資産家で三代続く法曹界の家柄だ。
オックスフォード大学に法科留学の経験を持つ国際派のインテリ弁護士…。
数年前に自分の法律事務所を立ち上げ、今では大勢の後輩弁護士を抱え、敏腕弁護でその名を轟かせている。
仕事が出来るだけでなく、容姿端麗、馬術は国体出場経験があるレベル、ダンスの名手でもある。
教養も深いが、決して偉ぶらず人好きのする明朗な性格だ。

数年前に、彼に一目惚れをした子爵令嬢とその両親に乞われるようにして結婚した。
…今では一児の父として安定した家庭で、幸せに暮らしているらしい。
…が、それは表向きで言われていることだ。
本心は分からない。
…誰にも、知る術がない…。

「…暁と上手く行ってないの?」
揶揄うように眉を上げて、尋ねられる。
月城は氷の美貌を一瞬たりとも変えずに答える。
「…いいえ、大紋様。お陰様で上手く行っております」
大紋はふっと笑う。
「だろうね。…面白くないから、嫌味を言っただけだ。…気にするな」
そう言って、ハバナ産の葉巻に火を点ける。
…うんざりするくらいに貴族的趣味が似合う人だ…。
月城は背筋を伸ばしたまま、ちらりと大紋を見遣った。

「…では、何をそんなに考え込んでいた?」
否定しようとして…しかし、なぜだか大紋に心の内を吐露したくなり、自分の心情を静かに話し出した。
「…私は…暁様には相応しい相手ではないと改めて感じていました」
大紋が葉巻から煙を吐きながら、ゆっくりと月城を見る。
月城は客間の錚々たる紳士を見渡す。
「…私はこれから、どんなに努力してもこの客間の中で大紋様のように、政治や経済の話に論議を戦わせたり、或いはビリヤードを興じることはできません。
…身分が違うからです」





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