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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第6章 いつか、愛を囁いて
「…申し訳ありません。こんなことを言うつもりはありませんでした。…けれど、司様がパリに帰国されてはきっと後悔すると思ったのです」
「…そ…そう…」
こんなにストレートに愛を告白されたことは初めてだ。
どう答えていいか分からない。
分からないけれど心臓の音が泉に聞こえてしまうのではないかと思うほどにどきどきと音を立てている。
「…僕は…よく分からない…。
だって…まだ真紀と別れたばかりだし…」
不器用に言葉をつなぐと泉は穏やかに笑った。
「もちろんです。…私は貴方に私を好きになっていただこうとは思ってはいません。
…貴方と私とでは身分が違いますし。…ただ、貴方が好きだとお伝えしたかっただけです」
…どうしてこの男はそう僕の胸に響くような言葉ばかり投げかけてくるのだろう。
司は自分でも訳のわからない切ない焦燥感に駆られる。
勇気を出して男を見上げる。
「…君のことを好きかは分からない。
でも…君が作るチャイは大好きだ」
嬉しそうに泉が笑う。
その温かい笑顔につられるように、気がつくと告げていた。
「…だから…もしかしたら…そのうち、君のことも好きになるかもしれない…」
「…司様…」
温かい吐息が絡み合い、どちらからともなく貌が寄せられ、そっと触れるだけの優しいキスが交わされる。
二人は同時にはっと眼を見張り、どきまぎと貌を伏せた。
司は照れ隠しに窓硝子の向こう…屋敷の舞踏室から流れる音楽に耳を傾ける。
「…花のワルツだ…」
ふっと溜息を吐く。
「…ついてないな。花のワルツは大好きな曲なのに…」
司はダンスが大好きだ。
「あちらに戻られますか?」
ぶんぶんと首を振る。
「嫌だよ。こんな泣き腫らした眼で…!ハンサムが台無しだもん!」
泉は可笑しそうに笑い、不意に優雅に一礼をすると手を差し伸べた。
「では、司様。私と踊っていただけますか?」
司は眼を丸くする。
「ここで⁈君と⁈」
「はい。…私でよろしければ…」
司は恥ずかしそうに睫毛を瞬かせ、泉の手を握りしめた。
「…喜んで…」
…チャイコフスキーの甘い夢のような花のワルツが切なく聴こえる…。
舞踏室では、踊る人々が華やかな影絵のように廻る。
外では、白い雪が音もなく静かに降り積もる。
温室の中、仄かな…しかし温かいガス灯の灯りのもと、二人はまるで幸せな恋人同士のように、いつまでも踊り続けるのだった。
「…そ…そう…」
こんなにストレートに愛を告白されたことは初めてだ。
どう答えていいか分からない。
分からないけれど心臓の音が泉に聞こえてしまうのではないかと思うほどにどきどきと音を立てている。
「…僕は…よく分からない…。
だって…まだ真紀と別れたばかりだし…」
不器用に言葉をつなぐと泉は穏やかに笑った。
「もちろんです。…私は貴方に私を好きになっていただこうとは思ってはいません。
…貴方と私とでは身分が違いますし。…ただ、貴方が好きだとお伝えしたかっただけです」
…どうしてこの男はそう僕の胸に響くような言葉ばかり投げかけてくるのだろう。
司は自分でも訳のわからない切ない焦燥感に駆られる。
勇気を出して男を見上げる。
「…君のことを好きかは分からない。
でも…君が作るチャイは大好きだ」
嬉しそうに泉が笑う。
その温かい笑顔につられるように、気がつくと告げていた。
「…だから…もしかしたら…そのうち、君のことも好きになるかもしれない…」
「…司様…」
温かい吐息が絡み合い、どちらからともなく貌が寄せられ、そっと触れるだけの優しいキスが交わされる。
二人は同時にはっと眼を見張り、どきまぎと貌を伏せた。
司は照れ隠しに窓硝子の向こう…屋敷の舞踏室から流れる音楽に耳を傾ける。
「…花のワルツだ…」
ふっと溜息を吐く。
「…ついてないな。花のワルツは大好きな曲なのに…」
司はダンスが大好きだ。
「あちらに戻られますか?」
ぶんぶんと首を振る。
「嫌だよ。こんな泣き腫らした眼で…!ハンサムが台無しだもん!」
泉は可笑しそうに笑い、不意に優雅に一礼をすると手を差し伸べた。
「では、司様。私と踊っていただけますか?」
司は眼を丸くする。
「ここで⁈君と⁈」
「はい。…私でよろしければ…」
司は恥ずかしそうに睫毛を瞬かせ、泉の手を握りしめた。
「…喜んで…」
…チャイコフスキーの甘い夢のような花のワルツが切なく聴こえる…。
舞踏室では、踊る人々が華やかな影絵のように廻る。
外では、白い雪が音もなく静かに降り積もる。
温室の中、仄かな…しかし温かいガス灯の灯りのもと、二人はまるで幸せな恋人同士のように、いつまでも踊り続けるのだった。