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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第8章 真夜中のお茶をご一緒に
「薫様…」
泉が薫の視線から司を守るように立ちはだかった。
薫が酷く傷ついたような眼差しをして、泉を見上げた。
「泉…まさか…司さんと…寝たの?」
12の薫から出るとは思えない下世話な言葉に込められた悲痛な想いを泉は感じ取り、胸が痛んだ。
泉は一度瞼を閉じ、ゆっくりと開くと薫を見つめ静かに答えた。
「…はい。薫様」
薫の美しい人形のような貌がくしゃりと歪んだ。
震える形の良い唇が叫ぶ。
「…泉の馬鹿!泉の嘘つき!」
「薫様、聞いて下さい…」
掴まれた腕を邪険に払い、渾身の力を振り絞り泉を突き飛ばす。
「大嫌いだ!泉なんて…大嫌い!」
泉を睨みつけ言い放つと、脱兎のごとくその場から立ち去り、階上へと続く階段に姿を消した。

「お待ち下さい!薫様!」
追いかけようとした泉の脚が不意に止まる。
泉と入れ替わりに大きな人影が現れた。
「…大紋様…!」

泉の目の前に現れたのは…舶来品のソフト帽を被り、ダークブラックの上質なカシミアのコートに身を包んだ大紋春馬であった。
「…薫くんがどうしても帰りたいと言っていたのでね。私は礼也と帝大の同窓会に出る為に富士屋ホテルに泊まっていたのだが、連れて帰ることにしたのだよ。
…どうした?早速喧嘩でもしたの…」
人当たりの良い明るい笑顔が、泉の背後に現れた人物の貌を見て、止まる。
「…泉…薫くん、大丈夫…?」
泉のガウンだけ身に纏ったしどけない婀娜めいた姿の司だった。
「…司様…」
泉は慌てて司の姿を隠すように大紋の前に立ちはだかった。

大紋は一瞬にして状況を悟り、やや悪戯めいた微笑を浮かべ、眉を上げて見せた。
「…なるほど。薫くんは新年早々失恋してしまったという訳だね。可哀想に…」
「大紋様、これは…」
大紋は温かく泉の肩に手を置く。
「大丈夫、他言はしないよ。私はそんな無粋な人間じゃない。…それから…薫くんは私のところで預かろう。暫く冷静になる時間が必要だろう。
礼也には連絡をしておくから気にするな」
「…大紋様。…何と申し上げて良いか…」
ため息混じりに呟く泉に優しく笑いかけ
「…恋は突然雷に撃たれたように陥るものだ。不可抗力だよ。…ましてやこんなに美しい青年ならばね…。私も覚えがある…」
そうどこかしみじみとした口調で呟くと、手を挙げてそのまま立ち去ったのだった。

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