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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第10章 初月の夜も貴方と
昼を過ぎても尚、細かい雪は深々と降り積もっていった。
初詣に行こうと計画していたのだが、月城の着付けで着物に着替えた暁は躊躇した。
窓の外に間断なく降りしきる雪を見ながら、遠慮勝ちに呟く。
「…初詣…明日にしない?」
暁に桔梗色の羽織を着せかけてやりながら、月城が貌を覗く。
「お気が進みませんか?」
暁は首を振る。
「…行きたいけれど…せっかく君に誂えてもらった着物を濡らしたくないんだ」
藤色の色羽二重の高価な着物は月城が京都の有名な職人に特別に依頼して誂えてくれたものだ。
今日は初下ろしで…雪とはいえ、裾を汚すのが偲びなかったのだ。
月城は小さく笑った。
「そのようなこと、お気になさらなくて良いのですよ。
…けれど、冷えてまいりましたし暁様がお風邪をお召しになってもいけません。
初詣は天候が回復してからにしましょう」
暁は思わず月城に抱きつく。
「…ありがとう。…嬉しい。…今日はずっと月城と二人きりでいられる…誰にも邪魔されないで…二人だけで…」
月城の藍色の着物から新品の上質な絹の良い香りがする。
月城は洋装だけでなく和装も良く似合う。
まるで一流の歌舞伎役者のような粋で美しい色男ぶりだった。
「…月城、着物が似合うね。…やっぱり他のひとに見せたくないから、明日は着物はやめてね…」
月城は街を歩くだけでその男振りに若い娘や人妻風の女性などが必ず熱い目をして振り返るのだ。
暁は誇らしい気持ちの反面、いつも焦れるような妬心を感じる。
月城の深いため息の音が聞こえた。
「…貴方は本当にタチが悪い…」
「…え?」
「…そんな風に無邪気に男を誑かす…。これが計算ではないから困るのです」
…こんな可愛らしいお貌をして…。
そう囁きながら、月城が暁の顎を持ち上げる。
「…可愛らしい嫉妬も私だけに向けてください…」
「…当たり前…んっ…」
抗議しようとする唇は、あっと言う間に男に塞がれたのだった。
初詣に行こうと計画していたのだが、月城の着付けで着物に着替えた暁は躊躇した。
窓の外に間断なく降りしきる雪を見ながら、遠慮勝ちに呟く。
「…初詣…明日にしない?」
暁に桔梗色の羽織を着せかけてやりながら、月城が貌を覗く。
「お気が進みませんか?」
暁は首を振る。
「…行きたいけれど…せっかく君に誂えてもらった着物を濡らしたくないんだ」
藤色の色羽二重の高価な着物は月城が京都の有名な職人に特別に依頼して誂えてくれたものだ。
今日は初下ろしで…雪とはいえ、裾を汚すのが偲びなかったのだ。
月城は小さく笑った。
「そのようなこと、お気になさらなくて良いのですよ。
…けれど、冷えてまいりましたし暁様がお風邪をお召しになってもいけません。
初詣は天候が回復してからにしましょう」
暁は思わず月城に抱きつく。
「…ありがとう。…嬉しい。…今日はずっと月城と二人きりでいられる…誰にも邪魔されないで…二人だけで…」
月城の藍色の着物から新品の上質な絹の良い香りがする。
月城は洋装だけでなく和装も良く似合う。
まるで一流の歌舞伎役者のような粋で美しい色男ぶりだった。
「…月城、着物が似合うね。…やっぱり他のひとに見せたくないから、明日は着物はやめてね…」
月城は街を歩くだけでその男振りに若い娘や人妻風の女性などが必ず熱い目をして振り返るのだ。
暁は誇らしい気持ちの反面、いつも焦れるような妬心を感じる。
月城の深いため息の音が聞こえた。
「…貴方は本当にタチが悪い…」
「…え?」
「…そんな風に無邪気に男を誑かす…。これが計算ではないから困るのです」
…こんな可愛らしいお貌をして…。
そう囁きながら、月城が暁の顎を持ち上げる。
「…可愛らしい嫉妬も私だけに向けてください…」
「…当たり前…んっ…」
抗議しようとする唇は、あっと言う間に男に塞がれたのだった。