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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
…眼の前に佇むこの温室の中のどんな高貴な花よりも匂い立つように麗しく…愛おしいひとを改めて熱い眼差しで見つめる。
「…あの小さな可愛らしい少年が、今やこんなにもあでやかにお美しく成熟されて…」
しなやかな動きで暁を腕の中に抱き込む。
「…私の伴侶として腕の中におられる…。感無量です」
暁は慌てて周りを見渡す。
「…ひとが…来たら…」
…二人の仲が、いくら北白川伯爵家の女主人たちと使用人たちとの間では公認とはいえ、昼日中温室で抱きあっていることを見られたら、月城の執事の威厳に拘るのではないかと懸念したのだ。
「大丈夫です。ここには滅多にひとは立ち寄りませんから…」
うっとりするほどに端麗な瞳で甘く囁かれ、抱き寄せられる。
「…月城…」
「…キスしていい…?暁…」
不意打ちのように呼び捨てで乞われ、身体の芯が甘く疼く。
「…君は…ずるいな…」
早くも潤んだ瞳で男を軽く睨む。
「…会いたかった。三日も君に会えなくて…寂しくてどうにかなりそうだった…」
「私もですよ。…貴方に触れたくて…」
手の甲で暁の白磁のようにきめ細やかな美しい貌に触れる。
そのまま形の良い顎を引き寄せ
「…たまらなかった…」
しっとりと押し包むような甘いくちづけが与えられる。
「…ん…っ…は…あ…っ…」
「…暁…」
暁の柔らかな薄い唇は男によりいとも簡単に押し開かれ、大胆に奪われる。
男の熱い舌が暁の舌を求め、濃厚に絡められる。
「…あ…も…だめ…兄さんが…くるから…」
甘く激しいくちづけに酔いながら、必死で抗う。
「…まだ大丈夫でしょう…暁…」
「…んんっ…」

…その時、温室の入り口のドアの向こうに人の気配を感じた暁は、慌てて月城の腕を振りほどく。
「…誰か…来る…」

月城と暁が振り返った瞬間にドアが押し開かれ、お仕着せを着た二人の下僕が姿を現した。
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