この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「翠叔母さまより年上だよ」
「見えない…本当にお美しい方だ…」
うっとりと独り言のように呟く國彦に、薫はやや同情めいた感情を抱いた。
…可哀想に…。
暁伯父様に恋をしても次の瞬間失恋するのに…。

暁を好きになるものは、数限りなくいた。
対外的には独身の暁には、未だに礼也の元に縁談が届くし、夜会やお茶会では年若の令嬢たちから成熟した夫人たちまで熱い眼差しで見つめられ、ダンスの相手を申し込まれる。
大胆に口説きにゆく色好みの夫人たちもいる。

…暁に夢中になるのは、なにも女性だけではない。
青年貴族や実業家、妻子がいる大貴族の紳士など、男性もこぞって暁に秋波を送っていた。
男性は女性より直接的に身体の関係を迫ることも多かった。

屋敷で夜会を催した際に、薄暗いバルコニーで暁が普段はとても礼儀正しい紳士に情熱的に迫られているのを、薫は目撃したことがある。
暁が危険な目に遭いそうになったら、飛び出そうと構えていたのだが、暁はやんわりと優しく…決して相手のプライドを傷つけないようにさらりと紳士をかわしていた。

しなやかな足取りでバルコニーから去る際に、柱の影で覗き見ていた薫と眼が合った。
暁は少しも動揺せずに、薫の悪戯を嗜めるかのように小さく笑った。
…その瞳には、薫ですらどきりとする匂い立つような色香が漂っていた。

…暁伯父様は、月城に夢中だ。
どれだけ口説かれても、他人には見向きもしない。
けれど、無意識に様々な人々の心を蕩かす不思議な魔力のようなものを持っている。
薫は最近、気付き始めていた。
…暁伯父様みたいなのを、魔性のひとというのかもしれないな…。

未だ暁に釘付けになっている國彦を憐れみの眼差しで見遣ると、薫は暁を改めて見つめる。

春の明るい午後の陽光が差し込む窓辺に座る暁の美貌は、静謐なまでの聖性に満ちていた。
…まるで西洋の美しい宗教画のようだ…。
ひんやりとした白い花のような美貌のひと…。
見慣れた薫ですらもため息を漏らさずにはいられない。

…煌めく宝石の如く美しく…しかしどこか脆い儚さを秘めた暁…。
その彼の横に、この家の執事 月城が静かに近づいてゆくのが見えた…。
/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ