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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
フロレアン・デュシャンは思わず眼を奪われるような美男であった。
アポロンのように輝くばかりの明るい美貌だけではなく独特のオーラを黙っていても発するような…そんな紳士であった。
「…初めまして。アキラ、ツキシロ。…光から手紙で知らされていたから、初めて会った気がしないな」
気さくに握手を求めながら、フロレアンは笑いかけた。
フロレアンは二人の近況を尋ねると、単刀直入に切り出した。
「君たち、ニースに来る気はないか?」
思わぬ提案に二人は眼を見張った。
フロレアンは要領良くあらましを説明した。
「僕の実家がニースでホテルを経営しているんだが、近くに小さなビストロを持っていてね。
そこの主人が高齢でこの夏に引退を決めたんだよ。
で、そこの借り手を今、探しているんだがなかなか見つからずに困っているんだ。
ニースの海辺が目の前の洒落たビストロだ。
調理器具や必要なものは全て揃っている。
前の主人が良かったら…と全て置いていってくれているんだ。
二、三階が住居となっている。こじんまりしているが清潔だし、二人で住むにはぴったりだよ。
…それに二ースには日本人は一人もいない。気楽なところだよ」
フロレアンは朗らかに目配せをした。
「…あの。それはつまり…」
月城が遠慮勝ちに口を開いた。
フロレアンは力強く頷いた。
「そう。二人でその店をやらないか?ヒカルの手紙に書いてあったけれど、ツキシロは元執事で料理の名人だし、アキラはビストロやカフェを経営していたそうだね。
二人の特性を活かせる悪くない仕事じゃないかと思うんだけれど」
月城が口を開く前に、暁がフロレアンに向かって叫ぶように答えた。
「ぜひ、僕達にやらせて下さい!ニースに…行きたいです。二人で…ビストロをやりたいです!」
月城が驚いたように暁を見つめた。
「…暁様…?」
暁はフロレアンがいるのも構わず、月城の手を握りしめた。
「ニースに行こう、月城!ニースで二人で店をやろう。君が料理を作って僕が珈琲を入れる。
…二人で堂々と生き甲斐を持って生きていこう。
君をこのまま隠遁者のように過ごさせるのなんて嫌だ。
僕は君と二人で陽の当たる場所で生きていきたい。
ささやかでもいい。二人で堂々と生きていきたいんだ…!」
「…暁様…!」
月城が感に耐えたように手を強く握り返した。
フロレアンがにっこりと笑った。
「…決まりだな」
アポロンのように輝くばかりの明るい美貌だけではなく独特のオーラを黙っていても発するような…そんな紳士であった。
「…初めまして。アキラ、ツキシロ。…光から手紙で知らされていたから、初めて会った気がしないな」
気さくに握手を求めながら、フロレアンは笑いかけた。
フロレアンは二人の近況を尋ねると、単刀直入に切り出した。
「君たち、ニースに来る気はないか?」
思わぬ提案に二人は眼を見張った。
フロレアンは要領良くあらましを説明した。
「僕の実家がニースでホテルを経営しているんだが、近くに小さなビストロを持っていてね。
そこの主人が高齢でこの夏に引退を決めたんだよ。
で、そこの借り手を今、探しているんだがなかなか見つからずに困っているんだ。
ニースの海辺が目の前の洒落たビストロだ。
調理器具や必要なものは全て揃っている。
前の主人が良かったら…と全て置いていってくれているんだ。
二、三階が住居となっている。こじんまりしているが清潔だし、二人で住むにはぴったりだよ。
…それに二ースには日本人は一人もいない。気楽なところだよ」
フロレアンは朗らかに目配せをした。
「…あの。それはつまり…」
月城が遠慮勝ちに口を開いた。
フロレアンは力強く頷いた。
「そう。二人でその店をやらないか?ヒカルの手紙に書いてあったけれど、ツキシロは元執事で料理の名人だし、アキラはビストロやカフェを経営していたそうだね。
二人の特性を活かせる悪くない仕事じゃないかと思うんだけれど」
月城が口を開く前に、暁がフロレアンに向かって叫ぶように答えた。
「ぜひ、僕達にやらせて下さい!ニースに…行きたいです。二人で…ビストロをやりたいです!」
月城が驚いたように暁を見つめた。
「…暁様…?」
暁はフロレアンがいるのも構わず、月城の手を握りしめた。
「ニースに行こう、月城!ニースで二人で店をやろう。君が料理を作って僕が珈琲を入れる。
…二人で堂々と生き甲斐を持って生きていこう。
君をこのまま隠遁者のように過ごさせるのなんて嫌だ。
僕は君と二人で陽の当たる場所で生きていきたい。
ささやかでもいい。二人で堂々と生きていきたいんだ…!」
「…暁様…!」
月城が感に耐えたように手を強く握り返した。
フロレアンがにっこりと笑った。
「…決まりだな」