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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
船着場に着くと、月城の船が丁度停泊を終えたところだった。
暁の姿を認めると、彼は船の上から穏やかに笑った。
長い黒髪が潮風にさらりと靡く。

…月城は船に乗るようになってから、髪を伸ばし始めた。
「結ぶ方が髪の乱れを気にしなくて良いので楽なのですよ」
艶やかな黒髪を無造作に麻の布で一つに結んだ月城は、今までの一分の隙もなく整えられた執事のスタイルと正反対だった。
海に出るようになって、上質な象牙色の肌は綺麗な小麦色に焼け、引き締まった怜悧な美貌に野性味を加味していた。
…生成りの麻のシャツは細身だが逞しい胸元がやや露わになっていて、長い脚は細身の黒いワークパンツとワークブーツに包まれていた。

…月城は…まるで、優雅な海賊みたいだ…。
美しく、逞しく、野生的でセクシーだ…。
暁の胸は、ドキドキと高鳴る。
毎日見ているのに、毎日ときめく。
毎日毎日、彼に恋しているみたいだ。

「お帰りなさい。無事で良かった…」
月城の貌を見て、思わず安堵の吐息が漏れる。
地中海の海は穏やかだとはいえ、沖に出るのだ。
漁に出る日は月城の船が港に入るまで、何とは無しに落ち着かなかった。

月城は長い脚で船着場の縁を一跨ぎし、ボラードにロープを括り付けた。
…そして、そのひと繋ぎの動作で暁を抱き寄せ、くちづけをする。
「…ん…っ…」
…潮の香りと太陽の光…そしてやはり、水仙の香りのくちづけが、暁を満たしてゆく。
「…ただいま、暁…」
陽の光の下のキスは未だに慣れない。
暁の白い頬が見る見る間に桜色に染まる。
「…お帰りなさい。…森…」

ここ、ニースには同性愛者のカップルが珍しくはなかった。
そして彼らは、おおっぴらに愛を語り合っていた。
異性同士のカップルと同じく、街中で海辺でキスを交わしている彼らを見て、暁は衝撃を受けた。
…同時に、包み隠さずありのままの自分でいて良いのだと…心の鎧が少しずつ外れてゆき、精神が開放されるのを感じた。

月城の想いも同じだった。
今では人目を憚らずに暁を抱き寄せ、キスをする。
…挨拶のキス、再会のキス、そして…愛のキスを…。

くちづけから暁を開放し、月城のひんやりとした手が暁の火照った頬を撫でる。
「少し日焼けしていらっしゃいますね。また帽子をお忘れに?…」
月城は船の縁にあった麦藁帽子を暁の頭に乗せた。
暁はくすぐったそうに笑った。






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