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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第14章 Coda 〜last waltz〜
ランチは大盛況だった。
平日だというのに、客は引きも切らずで午後一時には全てのメニューが完売してしまった。
暁が煎れる珈琲やカフェ・オ・レだけでもいいという有難い客もいて、午後三時すぎまで店は大盛況だった。

合間を見て暁は、フロレアンのアトリエにランチを届けに行った。
フロレアンはお礼を言ったのち、やや色っぽい目配せをしてみせた。
「ディナーの予約を頼めるかい?二人分だ。
…海が見える窓ぎわの席がいいな」
暁は眼を見張った。
「…新しい恋人ですか?」
フロレアンは小さく笑うと肩をすくめ、広いアトリエの部屋を横切り、キャンバスの前に戻っていった。
「さあね…」

フロレアンは新しい恋人ができると直ぐに二人の店に連れてくる。
…パリのブルジョワマダム、貴族の令嬢、美人女優、美人モデル、美人歌手…。
相手はどれも華やかで美しいひとばかりだ。

…だが、なかなか続かない。
早いパターンだと季節が変わる前には別れている。
フロレアンは別れ際が綺麗らしく、揉めることもなくいつのまにかその関係は終わりを迎えているのだ…。

…そしてまた彼は暁に告げる。
「ディナーの予約を頼めるかい?二人分だ。
…海が見える窓ぎわの席がいいな」


…原因は…。

暁は、壁に掛けられた肖像画にゆっくりと眼を遣り語りかける。
…義姉さん…。貴女かもね…。

肖像画の光はきらきら輝く宝石のような貌で、暁に笑いかけていた。
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