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隠密の華
第8章 七
「生憎だが、こいつは俺のだ。そういうことするのも、俺の仕事なんでな」
そのまま目の前に立つ桐から手を引かれると、私は桐の腕の中に包まれる。……桐のものになった覚えもない。助けて貰って、言えないが。
「俺の胡蝶に手を出すとは、良い度胸だな。拷問が怖くないのか?」
「天下の白夜様の溺愛している人を愛して光栄ですよ。胡蝶があんたを好きになることはないけどな」
「戯れ言を」
桐の腕に包まれたまま、私は二人の会話に耳を傾ける。……何だ。何か始まったぞ。勝手に争い事を……。
「胡蝶は俺にしか靡かない。覚えとけよ!」
冷静に二人を交互に見ていると、桐が捨て台詞ならぬ言葉を言い放ち、突然走り出す。手を引かれるがまま、私もその後に続いて走り出した。
「都、行くぞ」
「何処へだ!?逃げても、追っ手が来るぞ!」
「良いから、まず着物を着ろ」
……何を考えているのか分からない。しかし扉へ向かって走る桐は酷く不機嫌に見え、それ以上言い返す事が出来なかった。