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隠密の華
第8章 七
特に桐は……拷問されるかもしれない。だから早く逃げなければ。
「桐、早く行こう。やはり宿屋には泊まらず、火凰国へ行く手段を見つけないと……」
「それなら大丈夫だ」
「大丈夫って何がだ?」
「国へ帰る手段は見つけてある」
「……手段を?」
心配していたが、桐がニヤリと微笑むと私は不思議になる。
「兵士達の話じゃ、今日の夜中に火凰国の商人が女を買いに来るらしい。町の闇市で、売買されてるんだと。そこで買った女を火凰国へ持ち帰り、売るらしい」
「じゃあそこへ行けば、商人に会えるんだな?」
「ああ。俺が商人と交渉する。だから夜になるまでは、ここに身を隠そう」
……そういうことだったのか。拗ねて変わっていると思えば、やはり頼りになる。私は桐へ頷きながら、気が抜けた様に安堵する。漸く国へ帰れる……そんな嬉しさが、今までに溜まった疲れと一緒に込み上げた。