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隠密の華
第9章 八
……今、胡蝶の事を聞くべきだろうか。
「設樂様……」
「何だ?都」
「一つ、お聞きしたい事があるのですが……」
何故、胡蝶の事を黙っていたのか。胡蝶は今何処にいるのか。……聞かなければいけない。隠密として。
「どうした?」
「……白夜には、許嫁がおりました。胡蝶という名前の女です。火凰国の女で昔水虎国にいたのですが、反対されて今は我が国にいると……」
「そうか……」
「設樂様は知っていたのですか?白夜に許嫁がいた事を。……胡蝶の事も」
「ああ……」
真剣に尋ねると、そんな私から一瞬設樂様が目をそらしながら返事をする。そして――はっきりと続けた。
「知っていた」
「では!何故私に、この様な密命を?今胡蝶の居場所を知っているのですか?胡蝶を白夜に会わせれば良かった筈では……」
「隠していてすまない。だが、胡蝶の事を都に話さなかったのは、もう胡蝶がいないからだ」
「いないとは……」
「亡くなったんだ。随分昔に」
その声は次第と弱くなり、設樂様の心情を察知出来る。