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隠密の華
第10章 九
……本当に良かった。後は私が都だと気付かれないよう、胡蝶として過ごすだけだ。
「そういえば桐は何処だ?」
「用があると言って町へ……」
「こんな時にか?そうだ、白夜。桐を胡蝶の護衛として、城に置いてやってはくれないだろうか」
「……!」
設樂様との会話で安心していると、設樂様が急に桐の護衛の件を白夜に頼み、鼓動が高鳴る。
「……桐とは、あの胡蝶を連れ去った男か?設樂、その頼みは聞く事が出来ない」
「白夜、桐は忠誠心の強い男だ。胡蝶への忠誠心は他の人間とは比べ物にならず、胡蝶の為なら自分の命も捨てられる。一番に胡蝶の安全を考えてくれ」
「しかし……アイツは胡蝶に心を寄せているんだぞ?」
「いくら何でも姫を寝取る真似はしない。桐はそこまで馬鹿じゃない。胡蝶の側に置いておけば、必ず役に立つ。どうか頼む」
「……」
設樂様から真剣に頼まれると、白夜は黙り込んだ。