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隠密の華
第10章 九
国の為ならこうなることも仕方ない事だと思っていたが、実際口付けられると後悔が込み上げる。……あんなに桐が止めてくれたのに。私は馬鹿だ。白夜を騙してまで、私は胡蝶でいて良い筈がない。白夜と口付けて良い筈が――
「白夜、待って……」
「駄目だ」
「っ……」
白夜の胸を押し一度白夜から離れても、再び唇を貪られ、会話を阻止される。
何年も会えなかった時間を取り戻す様に、夢中で上下唇を食まれ、吸い上げられ、息つく暇もない。
もし今、白夜が私の正体を知れば、この唇は拷問に変わるだろう。
いとおしそうに見る瞳も、憎しみのこもった瞳に変わる。
それ程私は白夜へ酷い事をしているのだ……。