この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠密の華
第11章 十
「こら、桐……設樂様に向かって何を……」
その瞬間、桐が私の頭を撫でていた設樂様の手を振り払うと、唖然とした。
「先に約束を破ったのはあんただからな」
「頭を撫でたぐらいで約束を破る事にはならないだろう?そんなに胡蝶へ触れたくて仕方なかったか?」
「……当たり前だろ」
設樂様を睨み付けて話す桐と、余裕そうに微笑む設樂様。二人が何を話しているのか分からないが、二人の間で何か約束があった事は分かる。
「桐、約束とは何だ?」
疑問に思いながら隣に立つ桐へ尋ねたが、急に桐から手を引かれると目を丸くした。
「もう俺も約束を守らない。行くぞ」
「行くぞって何処へだ!?今日は行事が……!」
「もう関係ない」
城の外へ向かって歩き出す桐へ抵抗するも、強く手首を握り締められながら強引に歩かされる。
……関係ないって。何を言ってるんだ。本当に、わけが分からない……。
そのまま私は冷や汗を滲ませながら、桐へついていくしかなかった。