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隠密の華
第1章 プロローグ
……愚か過ぎて、自分が嫌になる。まさか山賊に捕まるなんて――
「小汚い娘だ。お前、名は?」
長身でがたいが良く、頭と顔を布で覆い目だけ露にしている男は、縄で両手を後ろ手に縛られ、地面に膝ま付く私を冷酷に睨み付けていた。
国と国との争いが激しさを増す中、旅していた私をコイツら山賊が捕虜として捕らえ、この住処へ連れて来たのは昨日の事。
村を占拠し、まさか民家を住処にしているとは……考えが甘かった。逃げ出すにも、見張りが多過ぎる。
「都(ミヤコ)」
「年は?」
「18」
「何処の村から来た?その荷物に履き物、旅していた格好だ」
「……別に。近くの村の人間だ」
本当は人を探していた。
それをこの男に言っても仕方ないだろう。
元々6つの洲からなる火鳳国(カホウコク)の第6代将軍直属の隠密である私は、将軍直々に命令を受けていた。
それは将軍の子で跡継ぎである設樂(シタラ)様を探すこと。
半年前戦地に出たきり設樂様は行方不明になっており、手掛かりも全くなく、私は城から戦地までの村を辿っているところだった。