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隠密の華
第3章 二
「御意」
そう返事をすると、私は膝ま付いたまま頭を下げた。また暫くは設樂様と会えなくなってしまうが、仕方ない。
「……そういえば、地下廊に残された手紙には戦地へ向かうと書かれていたのですが、何故この村に?」
「ああ……それは、戦地へ一度俺は向かった。そこで戦意を失った者や住処のない者を集め、ここに山賊の本拠を作ったのだ。偶然この村は敵軍に襲われ、村人達は皆逃げていた」
「そうだったのですね……私は偶然ここへ通り掛かったのですね」
こうして設樂様の顔を見る事も、暫くは……出来ないのか。顔を上げて設樂様の顔を見ながら、私は内心残念に思う。
「……都、俺は父上と兄上を説得する為にここへ残るが、必ず後を追う。それまでは桐と二人、無事でいてくれ」
「頼もしいお言葉です」
「都、俺は……」
隠密としてしか生きれない私だからこその別れだ。真剣に何か話そうとする設樂様へ、私は顔色一つ変えずに告げた。
「行ってまいります――」