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隠密の華
第3章 二

きっと設樂様なら争いを終わらせ、この世を平和に出来る。……そう信じさせてくれる。

「しかし白夜と言えば、無数の女好きとして有名では?誰かれかまわず手を出すと聞いた事があります。そんないい加減な男に、命を捧げる程の女が見つかるでしょうか……?」

「そこを頼む。都の力で見つけ出して欲しい。白夜と夫婦になる女は、誰でも良いわけではない。命を捧げる程でないと……絶対にならぬのだ。ただの政略結婚では、双国の将軍が抜いた剣を鞘に納めるとは思えない」

誰よりも国を想う設樂様を、私は尊敬の眼差しで見つめる。

「分かりました……命に変えても、この都、密命を果たします」

「頼んだぞ。その為に俺も、こうして山賊に成り代わっている。火凰国と水虎国を繋ぐ鳳凰山。今ここは水虎軍に包囲され、軍隊も入れず立ち往生している。水虎国へは、食糧や武器、それに人間を売る特定の商人しか入れない」

「だから私を売ろうとしていたのですね?」

「そうだ。既に明日女を売ると、商人に話はつけてある。危険だが、……向かってくれるか?」

隠密になった時から、心は決まっていた。例え危険であろうとも、……私は密命を果たすのみ――


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