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隠密の華
第4章 三
* * *
「おい、都、元気ねーな。1日歩いて疲れたか?」
「……別に。これからどうするか考えていただけだ」
それから外の闇が深くなるまで歩かされて。山の頂きにある小さな小屋で休んでいると、隣で寝ている桐から話し掛けられ私はハッとした。……また設樂様の事を考えていた。何故だろうか。麓を発ってから、ずっと設樂様の事が頭から離れない。
「なぁ、明日には水虎国に入るんだろ?俺達は紫水って奴のとこに行くのか?」
「そうだ。紫水は軍隊の隊長。即ち、水虎城に侵入出来る。城へ侵入出来れば、白夜にも接触出来るからな」
「そうか……なぁ、都」
設樂様も将軍と兄上の山伏様を説得したら、私達の後を追うと言っていた。二度と会えないわけではないんだ。それなのに何故、こんなに胸騒ぎがするんだ……。
「なぁ、なぁ、都」
「何だ?」
「商人の親父も外で見張ってていねーことだし……もう少し、こっちくっつけよ」
「……は?」
真剣に考えていた思考は、桐の言葉で一旦停止した。