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隠密の華
第4章 三

……まるで見つけた獲物を睨み付ける大蛇だ。相手を震え上がらせる程の威圧感。どうして気付かれた。まずい。ここで動揺したら、隠密だと気付かれる。
「それは……」
「まあ、良い。お前が誰であろうと、もう私には関係のないこと。私はもう……軍を辞めているから」
ごくっと唾を飲み込みながら話そうとすると、先に紫水が話し出す。その言葉に私はまた、唖然とする。
「えっ……」
「不治の病でね。こうしてお前達を買ったのも、偶然町で商人から売りたい男女がいると話し掛けられたからだったが……実は、どうこうする元気もないんだ……」
「不治の病……?」
紫水が軍を辞めていたなんて。それに不治の病とは……。だからこうも生気が感じられないのか。設樂様も、この事は知らないのでは。

