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隠密の華
第6章 五
予想もしていなかった好機を無駄にするわけにいかない。白夜から胡蝶の事を色々聞き出し、国へ帰らなければ。そして本物の胡蝶を探し出す。そうすればきっと胡蝶と白夜は結婚し、平和を導いてくれる――
「胡蝶、本当に悪かった。結婚を反対し、将軍がお前を国へ返したと聞いた時、俺は絶望した……もう二度と胡蝶に会えないのかと思い、何度祖国を捨てようと思ったか……」
城の二階にある一室。石造りで、壁や棚には高価そうな置物や絵が飾られている、普通の民家とは大差のある高級な部屋へ案内されると、私はすぐに白夜から申し訳なさそうに謝られた。……こんなにも白夜は胡蝶を愛していたのだ。探し出して会わせれば、結婚しないわけがない。
「……私もよ。白夜。ずっと会いたかったわ……」
それまでは、私が胡蝶のふりをする。白夜に話を合わせておけば、気付かれることもない。
「しかし、何故紫水の住処にいた?山賊から売られたと聞いたが……」
「偶然山賊に捕まり、紫水へ売られたの……紫水に都と名乗っていたのは、素性を気付かれない為です」
「そうだったか……辛い思いをさせた……」
目の前に立つ白夜へ真剣に話すと、唐突に白夜から体を抱き締められる。
「……!」
「全て俺のせいだ。許してくれ、胡蝶」
「え、ええ……そんな白夜を恨んだりしていないから……少し離れて……」
流石、婚約者だったというだけあり距離が近い。しかし、こうも急に来られると戸惑ってしまう。