この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
溺れる金魚
第3章 姫金魚
……多分彼にも。
誰か特別な人がいるのかもしれないと、そう思ったのは結婚して間もなくだ。
その時偶然に見付けてしまった、普段滅多に乗ることの無い彼の車の助手席の隙間に見たことの無いピアス。
ありきたりな発覚に、それでも指先が凍るほど冷えたのを今でもはっきりと覚えている。
優秀な彼の事だ。
あの最大のミス以外は、その影など完璧に消せるだろう。
だから、それ以降はその関係がどうなっているのかも分からない。
それでも、夫婦間で性交渉が全く無くても満足出来ているということは、多分そういうことなのだろうと、彼女は思っていた。
だから、紗良はそれ以来感情を出さないよう心掛けた。
愛してると言えば重荷になるだろうし。
嫌いと言えば、彼はあの会社から出ていかなくてはいけなくなる。
むき出しにした感情は、いずれにしても彼にとっては迷惑なだけ。
きっとその感情は、自分の知らない女性が彼に向けるのだ。
そして彼もまた、熱い激情をその相手にのみ向けるのだろう……。
顔も知らないその人の事が羨ましくて仕方なかった。
人生で初めての嫉妬だった。
誰か特別な人がいるのかもしれないと、そう思ったのは結婚して間もなくだ。
その時偶然に見付けてしまった、普段滅多に乗ることの無い彼の車の助手席の隙間に見たことの無いピアス。
ありきたりな発覚に、それでも指先が凍るほど冷えたのを今でもはっきりと覚えている。
優秀な彼の事だ。
あの最大のミス以外は、その影など完璧に消せるだろう。
だから、それ以降はその関係がどうなっているのかも分からない。
それでも、夫婦間で性交渉が全く無くても満足出来ているということは、多分そういうことなのだろうと、彼女は思っていた。
だから、紗良はそれ以来感情を出さないよう心掛けた。
愛してると言えば重荷になるだろうし。
嫌いと言えば、彼はあの会社から出ていかなくてはいけなくなる。
むき出しにした感情は、いずれにしても彼にとっては迷惑なだけ。
きっとその感情は、自分の知らない女性が彼に向けるのだ。
そして彼もまた、熱い激情をその相手にのみ向けるのだろう……。
顔も知らないその人の事が羨ましくて仕方なかった。
人生で初めての嫉妬だった。