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溺れる金魚
第25章  嫉妬と溺愛
「お前、余計なこと言ってないだろうな?」

紗良には聞こえないように佐野が囁く。


「さあな、俺は言ってないけど、俺の奥さんは言ったかも」


慌てて佐野は紗良の顔を窺う。

小首を傾げながら佐野を見詰めるその眼差し。


上気した頬に、佐野は再び口元を押さえた。



「くそ、呼ぶんじゃなかったな……」

それだけぼやくと「お前に紹介したい人がいるから……ほら、行くぞ」と友を促しその場を離れる。



ちらりと紗良を振り向き、佐野は居心地悪そうに目を逸らした。



紗良の背でふふふと笑う声がする。
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