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溺れる金魚
第2章  まだ始まってもいない
「……また同じ物のを買ってきたのか?」


花市で見付けたそれを持って帰ると、リビングで寛いでいた彼が嫌味のように言ってきた。



その鋭い目付きを更に強調するような金属製のフレームに、彼女は無意識に萎縮して肩をすぼませた。


「……すみません」

「まぁ、そこは君のテリトリーだ。とやかくは言いわないが」



それはまるで無関心と言っているように彼女には聞こえた。

ベランダの大きなガラス窓を開けると風がなびきカーテンが大きく揺れた。



買ってきたばかりの鉢植えをベランダにある木製のスツールの上にそっと置く。

その回りにも色とりどりだが、同じ花の鉢が幾つも置かれていた。





……どうか、お願い。この想いに気付いて。
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