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**情画**
第7章 曙


「いいわ。描いて。」

声を出さない、縄で括られた意味がわかった。
これは沙絵さんの色絵なのだ。

先生が作品を描きながら、欲を筆に含ませて色付けする。

先生と沙絵さんの愛が、先生によって形作られるのを、ワタシはここでこんな体勢で見なければならない。

それが今日のお仕置きなのだ。

先生も、ワタシが見ている中で沙絵さんとの愛を象る。ワタシを意識しても、見てはいけない。
見ているワタシが側にいると知りながら作品に手掛けなければならない。


それは、ワタシにとって今までのどんな仕打ちよりも辛い拷問だった。


自分がモデルになる時、先生の姿を見ることはあっても、紙に描かれる部分はわからない。

それを沙絵さんへの愛を見せつけられるのだ。


そして、沙絵さんのポーズは、色絵の百合の絵に似ている。
『ヴィーナスの誕生』
床に円を描くプリーツスカートが、生まれ出たヴィーナスの貝殻に見えた。

真っ直ぐに視線を向けるその瞳は、先生への愛を誓っているのだろうか。


こんなことをしなくても、いつも一緒にいて愛することができるのに、何故ワタシに見せつけるのだろうか。


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