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**情画**
第7章 曙
沙織さんは大きな瞳に溜まった涙が溢れないうちに、手の甲でギュッと拭った。
少し上を向いていて落ち着いたのか、ワタシの目を見て、
「ありがとう。」
と、はっきり言った。
「お祖父様はよく、『死んだものの魂は、同じ日に生まれたものの体に宿る。身近にいる我が子の体に宿らない訳がない。お前は沙織の生まれ変わりなんだ。』って話してたのよ。
考えてみれば、お腹の中にいるときから魂はあるはずだもの、あり得ない話だわ。あの狸にずっと騙されていたわ。」
沙絵さんが笑い飛ばした。
「沙絵、その話初めて聞くよ。」
「そうよ。お父様に知られたら、身代わりにされるからって言われてたもの。
どっちみちされたけどね。」
また、笑う。
「あっ…とんだ狸だ。あはは…あはははっ」
先生は笑いながら沙絵さんの肩を叩く。
「ありがとう、いずみさん。おかげでスッキリしたわ。でも一度でいいからお母様に抱き締めてもらいたかった。」
「沙絵は記憶にないだろうけどちゃんと抱き締められていたんだよ。
僕が分娩室に呼ばれた時、沙絵は沙織の胸に置かれ、抱き締められていたんだよ。おっぱいに吸い付いていたよ。
沙織は息を引き取っていたけど、沙絵を抱き締めていた。しっかりとね。
先生が許してくれて、温もりがなくなるまでずっとそのままでいたんだよ。」