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**情画**
第8章 別れ
神妙な面持ちでいるいずみを描いていく。
訳も判らず不安なんだろう。
シンと静まりかえった部屋の中で、僕の筆の音がレクイエムとなる。
いずみは喪服も似合う。白い着物もいいが、黒が白い肌に映える。
憂いの表情はまさにレクイエムというタイトルに相応しい。
何が起きたか知りたくて唇は震えている。
全く色を持たず鎮魂の儀式の最中にあるいずみを、
不謹慎にも美しいと思い、抱きたくなった。
早く描きあげて、憂いから解放してあげたい。
僕は急いで筆を進めていく。
白と黒、どちらかというと黒の明暗や影や光を色付けて立体を表現するほうが難しい。
白に僅かに黒を入れたり、黄を入れて明暗を作るほうが簡単だ。
明るい部分に僅かに白を入れて色をつくる。
そこからさらに白を減らしていって影の部分を色付けるのだ。
そこから、また明るい色をつけたところに戻り、細かい調整をしていく。
何も入れない黒を付けてしまった部分は手直しが出来ないので、色を付けずに残し、
本当に真っ黒で大丈夫だとわかったときに色をつけるのだ。
襟元や手は着物より先に色付けしたが、顔や髪は後回しにした。
着物がしっかり描き終わってから、バランスを考え色付けするつもりだ。