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**情画**
第8章 別れ
「でも?」
「ここを通る度に、桜の季節になる度に、朝顔を見る度に、先生に会いたい、何度も思いました。
そして沙絵さんに嫉妬して、逃げ出した自分には先生に会う資格はないと、言い聞かせて堪えていました。」
「そうでしたか…
お子さんの描いた朝顔はもしかして…」
「そうです。先生にいただいた此処の朝顔です。
いただいた鉢植えはずっと1日中咲き続けていたのに、
翌年からはどんなに色々試しても、朝しか咲かなくなりました。
それが、やはりワタシは先生に会う資格がないと思わせて、ずっと、ずっと、機会を逃してしまったのです。」
「そうでしたか…
沙絵が決めた18までという期間は皆に必要な時間だったのかもしれませんね。」
先生はしみじみとおっしゃった。
それなのにワタシが知りたいのは、もっと不躾なことだった。
「先生、あの…
薔薇と百合の話を教えてください。」
「そうですね。貴女には知る権利がある。
その前に、父親というのはいつ生まれるのでしょうね。」
「生まれる?」
「そうです。自覚というか、いつ父親になるのでしょうか…
女性と違って身籠らず、痛みもなく、自分のものという認識もない。
子を迎え、我が子と言われて少しずつ自覚していくのだと
そうであれば、血の繋がりはさして影響ないのではないかと。」