この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
**情画**
第1章 再開
白い手と栗色の長い髪が視界に入り、お礼を言おうと涙を拭って顔を上げた時には、沙絵さんは部屋を出ていくところだった。
「いただきます。」
「どうぞ。」
先生は振り向いてくださらない。
ワタシは紅茶に口をつける。カモミールティーだった。
「突然お邪魔してすみません。」
「いや、よく来てくださった。」
背を向けたままで会話は続く。
「ずっと逃げ出したままにしてすみませんでした。」
「仕方ないことです。
今日はどのくらい時間ありますか?
お子さんが帰ってくるまででしょうか?」
「は、あ…」
「貴女は気づいていないようだが、沙絵が何度か貴女たちとすれ違ってるんですよ。」
「そうでしたか。」
「あの時妊娠していて体調が優れなかったんでしょうね。
男の子だそうですね。」
「は、はい。」
「お子さんに恵まれてご家族仲良くなれて良かったです。」
「先生…」
ワタシは、秘密を話してしまいたかった。
でも、踏みとどまった。
「一つ聞いてもいいですか?」
「はい。」
「塀の絵を見て、思い出話をしにいらしたのですか?
それともまだ僕への気持ちがあると思っていいですか?」