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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ


「それでは講習を始めます。講師を努めます、ルカです」

時間になって座ったまま、7mの縄の束を手に自己紹介。
最初は本当に緊張してたけど、だいぶ慣れて堂に入ってきた。
今日の人たちは全部で3組。全員新規。なるほど、という人もいれば、意外、っていう人もいる。

「まずは縄をお渡しします。縛り手になる方は前へ」

取りに来る彼女たちの顔を、私は必ず正面から見る。
ドキドキしてる。どこか不安そう。自信ありそう。好奇心いっぱい。
色んな表情を覗かせる彼女たちの中に眠る衝動を、引き出せたらいいなと考えながら。

最後の人に縄を渡したその時、入り口のカーテンが揺れて人影が現れ、そちらに注意が向いた。

逞しい長身。
肩まで届く柔らかそうにウェーブした髪。
底深さが窺える光を宿した瞳。
猛禽類を思わせるその出で立ちに、鼓動が跳ねる。

息が止まりそうになるのを懸命に堪えて、目の前の人たちに集中した。
この程度で乱れちゃいけない。いつも通り。だけど昂ったそれはなかなか平静に戻らない。

野暮用って、何?本当に野暮だ。信じらんない。ほんっと、サイッテー。
後で絶対、文句言ってやる。
だから、今は、目の前に集中しなきゃ。

気付かれないように大きく息を吸って、最初に必ず言うようにしてる言葉を告げようと口を開く。

「今日ここにいらっしゃる方同士がどんな関係性でも構いません。だけど、男女問わず、サドマゾ関係なく、縛り手になる方が抱く側です」

すぐそこで満足げに立つ孤高の緊縛師が、私に教えた大事な教え。
私のポリシーと一緒になって、私の足元を支えている。
いつもその上で背筋を伸ばし、胸を張って、同じ目線で向き合いながら、私は私の女王になろうとしてる。

どんな時でも忘れないでいたい想いは、たったひとつ。


「これからその腕に抱く人をどうか、心から愛して下さい」



-fin-

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